ワタシノタイヨウ
「オレはカスミに出会ったから、知る事が出来た。乗り越えていかなきゃならない事を、カスミが教えてくれたんです。そしてその痛みを一緒に乗り越えて行こうと言ってくれた。」


「そんなのっ……偽善だ。」


今井先生は顔を歪め、苦しそうな表情を見せた。


「そうかもしれない…けど、それでもまた信じたいと思える気持ちになれた。」


「あんたは、鈴原に救って貰ったからそう言えるんだ。オレには、そんな奴現れない…」


今まで黙っていた私は、どうしても伝えたい事があり声を出した。


『今井先生、今のまんまじゃダメです。だって、先生が乗り越えようとしないと、ホントに先生の事想ってくれてる人に出会えても、気づけないですよ…』


「…………」


今井先生は黙ったまま私を見つめる。


『こんな事繰り返しても何も変わりません。先生の傷がさらに深くなるだけだと思うんです。だからもう前に進みませんか…きっと出会えるはずです。今井先生の事、本当に想ってくれる人に。』


私は彼を見つめ微笑んだ。

彼は私の頭を撫で微笑み返す。


「出会えるのかな…また人を好きになってもいいのかな…」


『はいっ!』


今度は今井先生に向かって、私は笑顔を見せた。


今井先生はフッと力無く笑う。


「鈴原……君だったらよかったのにな。」


『えっ…!?』


「カスミはダメだ。」


彼は私を隠すように抱きしめた。


「ハハッ、わかってますよ…青山先生には冗談が通じないなぁ。」


今井先生はゆっくり立ち上がり、私たちに向かって頭を下げた。


「すいませんでした。鈴原…怖い思いさせて悪かったね。」


『今井先生…』


「オレ少し考えてみるよ。すぐにあの時の事を許せるとは思えないけど、このままじゃダメなのはわかってるつもりだから。」


「あなたなら、立ち直れるって
オレ信じてますから…」


「ありがとう、青山先生…」



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