ワタシノタイヨウ
(えっ!?)


引き寄せられた私の頭は彼の腕の中にあった。


微かにタバコの香りがする。


私がドキドキしていると、


「ありがとう…。」


そう言って、彼は優しく私の頭をなでた。



「オレはずっとサエの死と向き合う事が出来なかった。現実を受け入れるのが怖かったんだ。でもお前の言葉で、少しずつだけど向き合ってみようと思うよ。」



私の心はドキドキしながらも、穏やかな気持ちで彼の話しを聞いていた。



「これから先どうなるかはわからないけど…とりあえず前を向いて生きて行くよ。サエの分も…」


そう言って私の顔を見つめ微笑んだ。




今の私には、この彼の言葉で十分だった。



“前を向いて生きて行く”



彼は止まっていた時間を動かす事を決めたんだと思う。


少しずつではあるけれど……。





私の気持ちは変わらない。


むしろ彼の過去を知った事で、前よりもっと愛おしく思える。




私たちは、茜色に染まっていく空と、ゆっくり沈んでいく太陽を、しばらく黙って見つめていた。




私は沈みゆく太陽に、ずっと彼の隣りで笑っていようと誓った。


いつかこの想いが届くように…。


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