短編集*虹色の1週間

この場所は駅にほど近いせいか、商店街の古さの割りに人の往来は絶えない。
ツタの葉とスモークガラスのお陰で、向こうからはわたしのことは、見えないはず。
美帆は暇にまかせて、人間ウォッチングをする。

2軒隣のとんかつ屋「蒲田」のだんなが、汗をかきかきキャベツを運んでいたり。
斜め向かいの楽器工房のお兄さんが、何やら悪態をつきながら車から木材を運び出していたり。
黄色い毛のふてぶてしい雰囲気のネコが、そこの角を曲がっていったり。
大仏パーマのおばさんが、すごい勢いで自転車をこいでいったり。

美帆のいるところから空は見えないが、ピーカンな天気らしい。
短くて濃い影で、元気な太陽がほぼ真上にあることが分かる。
強い日差しが地面に反射して、行き交う人々の顔が輝いて見える。


外の世界は、美帆抜きで何の問題もなく回っていた。



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