勇者に従え!
旅始め
俺は勇者。

『勇者アトラスカ』の血を引く由緒正しい『勇者一族』の者だ。

つい最近までは勇者スクールへ行き、勇者のタマゴとして日々鍛錬を積み重ねていた。

しかしめでたくスクールも無事卒業。晴れて俺は一階の半人前勇者となったのだった。

(嬉しい‥)

ようやくこれで村の外の世界を見て回る資格ができた。

カジ屋一族の店に寄って早速適当な武器と防具を見繕ってもらう。

‥と言っても俺には武器や防具にかけられるような資金がちっとも無かったので、優しい店主がサビかけたソードと大鍋ブタの盾と薬草3つを持たせてくれた。

腰に取り付けた皮の装備入れへ、道具をいつでも取り出せる用にセットする。

それから、常ならば閂(かんぬき)によって閉ざされている村の北正門口を通り抜けて、俺は村を後にした。

‥‥。

しばらく歩いてから後ろを振り返り、村が見えなくなった事を確認する。
村は豆粒ほどにしか見えなくなっていた。

ここまで来ればもう誰にも聞かれる事はないだろう。

俺は、思い切り叫んだ。


「あんな村滅んじまえ!バァーカッ!!」


17年間思ってはいても一度も口に出さなかった、村に対する批判罵倒を喚き散らす。

はたから見ればただの頭のネジの緩んだ若者に見えただろう。

よもや勇者村の勇者などとは思いもすまい。

ハァハァと荒い息をついて、俺は村を睨みつけた。
俺は、自分の生まれ育ったあの村が大嫌いなのだ。

睨むだけ睨むと、俺はくるりと踵を返して走り出した。
『外の世界』を知る為に。

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