Kの純情∞Uの欲情

「今流行りなんだって、この髪型」


普段流行には無頓着だけど、


仕入れたばかりの薄っぺらな情報を

誰にと言うわけでもなく笑みと共に見せつけた。


切られたばかりの毛先を指で遊びながら席に荷物を下ろすと、
“まだまだ”と言わんばかりの顔の麻美もセットで着いて来た。



「香奈どういう事よ」


「どういう事って、さっき言ったでしょ。気分転換よ」


全てあいつに見せつけてやりたい。

ただそれだけの感情が私を突き動かす。


「あれだけ意気込んでたのに簡単に諦めるの!?」


視線を反らす私にすかさず食いついてくる麻美。



「諦めるって何を?

私はただイメチェンしただけじゃない」


涼しげな笑顔で交わす私に観念したのか、


麻美はようやく静かに腰を下ろした。


「で、何があったのよ」



“何があったのか”なんて聞かれても、何かあったわけでは無い。


“諦めたの”かと聞かれれば、諦めたものなど何も無い。


駆け引きが出来るほど私は器用じゃ無いから、


こうするしかないと思った。






< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop