Kの純情∞Uの欲情
「今流行りなんだって、この髪型」
普段流行には無頓着だけど、
仕入れたばかりの薄っぺらな情報を
誰にと言うわけでもなく笑みと共に見せつけた。
切られたばかりの毛先を指で遊びながら席に荷物を下ろすと、
“まだまだ”と言わんばかりの顔の麻美もセットで着いて来た。
「香奈どういう事よ」
「どういう事って、さっき言ったでしょ。気分転換よ」
全てあいつに見せつけてやりたい。
ただそれだけの感情が私を突き動かす。
「あれだけ意気込んでたのに簡単に諦めるの!?」
視線を反らす私にすかさず食いついてくる麻美。
「諦めるって何を?
私はただイメチェンしただけじゃない」
涼しげな笑顔で交わす私に観念したのか、
麻美はようやく静かに腰を下ろした。
「で、何があったのよ」
“何があったのか”なんて聞かれても、何かあったわけでは無い。
“諦めたの”かと聞かれれば、諦めたものなど何も無い。
駆け引きが出来るほど私は器用じゃ無いから、
こうするしかないと思った。