ますかれーど
1階から2階が吹き抜けのこの家。


左右の弓なりの階段を登った先には、6つのドアが横並びになっている。


私の部屋っぽくなってるのは、向かって右から2番目。


でも玄は、1番 左のドアへと私ごと入っていった。



「玄っ!いい加減、離してくれない?」



私が強めにそう言うと、玄はスッと離れて窓際の白いソファに座った。



「大体、女の子の二の腕を掴むなんて、失礼なんだからっ」



少し赤くなっていそうな、白い二の腕。

女の子としては気になる部位なわけで。



「はぁぁーー‥」



片手で顔を覆いながら、長い深いため息をついた玄。

両膝に両肘を置き、前屈みになっている。



「お前さぁ‥」



びくっ


いつもより低い声。

これは、本気で怒ってる時の声だ。



「あ、あたし‥学校行かなきゃ!」



玄の雷は恐い。

普段はあんな風に、ヘタレな感じなのに。

たまに落ちるからこそ恐い。



「待て。今日は土曜日だ」



ーー‥逃げる理由が、なくなりました。






ーーーーーーーー‥






ーー‥沈黙が痛い。


私、なんでココに連れてこられたの?


何に怒ってるの?



わからない。



「なぁ、」



低いっ!

声が低いよ!



「はぁーー‥もう、あんな顔すんな」



ーー‥え?



そう言った玄は、その紅茶色の瞳を私に向けて射抜く。


なんとなく‥


切なそうな

悲しそうな


そんな‥感じ。



「意味が‥わかんないよ?」



声が勝手に震える。



なんでだろう?

触れて欲しくない所に触れてしまいそうでーー‥


胸の中がザワザワする。



「泣きたきゃ‥泣いて良いから」



ふわりと瞳を細める玄。




この

白と黒のモノクロの部屋に

キラキラと光るものが差し込んで

仮面の後ろの闇を

消し去ろうとしてる




私は‥此処に居るよ




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