ますかれーど

--心side--

あのね?

深い深い闇の中では、いくらもがいたって、いくら一生懸命に手を伸ばしたってーー‥届かない。

届かないの。

それならいっそ、この闇の深淵まで辿り着いてしまえば、どんなに楽だろう‥ね?


繰り返す時の流れは、そう、まるでメビウスの輪。メビウスの輪にはね、終焉がないの。

こっちは表?それとも裏?


そんな事を繰り返しながら、戻っては進んで、進んでは戻って。


終わりなんてない。


でも、お母さんが居なくなったら、それが終わり?

居なくなる?ーー‥誰が?


巡り廻る思考はループして繰り返す。囚われて進むことが出来なくて。

進む?ーー‥何を?


わからない。
ーー‥わからない。


何もかもがわからない。涙すらも出てこない。

音が遠くて聞こえなくて、なんて言ってるのかわからない。



『ーーーで』


なに?


『ーー‥おいで』


どこに?


『おいで‥』


深くて暗い闇の中に見えた、キラリと光るもの。


『おいで』


ワタシは、それに向かって歩いてく。

なんでだろ?

それが正解だと思ったんだ。



『君は此処に居ちゃいけないよ』


少し高めの心地良い声と、両肩に感じる温かな手。


『また、自分を責めるの?』


責める?ーー‥うん。だって、ワタシの所為だから。


『何で?』


‥何も、出来なかったの。


『君は、何をしたかったの?』


‥え?


『あの場で、君には何ができたの?』


…………。


『思い出して』


あの時‥ワタシはーー‥


『出来ることなんて、なかったんでしょ?』


ーー‥かった。


『ん?』


何も‥何も、出来ることなんて、なかった‥


『ん。じゃぁ、今は?』


ーー‥今?


『出来ること、ないの?』


ワタシに‥出来ること?


『その手に持ってるものは何?』


おま‥もり。


『君にしか出来ないこと、もっとたくさんあると思うよ?』



見えた光。



『君は、此処に居ちゃいけない。俺と同じところに居ちゃいけないんだ』


まばゆい光は、ワタシを照らして引き上げる。



『君には、キラキラした光が似合ってる』



離れてゆく温もりと声。



『あ、それと、』



音も光も、だんだんと戻ってくるのが分かる。







『誕生日、おめでとう。心太♪』
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