ますかれーど

--心side--

私が追いかけるべきその人は、私が歩き出すと同時にフロアへと降りてきた。

瞳は合っている‥はず。

顔全体を覆い隠すその仮面では、表情が分からなかった。


あの人には、今の場面が見えていたはずだ。

なんて‥言うだろうか。



「あの‥っ」



声をかけた、その時だった。



「キャーッ!!!!」



恐ろしいほどの黄色い歓声がその人を取り巻く。

耳がキィィン‥と鳴って、塞がずにはいられないくらいの声。


そういえば、あの人は昔から外に出れば逆ナンが絶えないような、そんな奴だったっけ。



なんか‥胸の奥がモヤモヤする。

すごくイライラする。


前はそんなことなかったのに。

それは、自覚してしまったから‥なんだよね?



あの人が、こっちを見てる。

周りを取り囲む黄色じゃなくて、私の蒼を見てる。


弓形に弧を描く瞳。
下弦の月のようにニタリと笑う口。

そんな道化の仮面の奥で、あなたはどんな顔をしているの?



輪を割いて、手を伸ばせば届くのに。

あなたの元へと行きたいのに。



歩くと決めた。
振り向かないって決めた。



なのにーー‥


隔てる黄色は、紅と蒼をこんなにも遠く感じさせるの。


今、あなたに伝えたいことがあります。



ーーー‥玄。







ーーーーーーー‥






するとその人は、顎である方向を指し、取り巻く女の子たちを振り切ってまた舞台へと上がってく。


そして、袖に消えた。



それは、私にしか分からない合図。


私は、マスカレードの終焉を述べる言葉が響くこの大聖堂の扉を、そっと開けた。




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