ますかれーど

--心side--

ーーーーーーー‥






「なんっじゃこりゃぁぁーッッ!!!」



気がついたら自分のベッドで寝ていた私。
寝ぼけまなこでドレッサーに座り、髪をといていたらーー‥



「な‥に?この跡。歯型?とアザ……」



フラッシュバックするのは、あの中庭での出来事。


身体が覚えてる‥


闇に飲まれる感覚

背中がゾクッとする感じ

ーーー唇の‥感触




「はぁぅっ」



震える唇を両手で抑え、勢い良く1階のお風呂場まで走る。


はぁ、はぁ、はぁ、


やだやだやだやだやだやだやだ‥やだ!



服を脱ぎ捨て、頭からシャワーをかぶる。



「ーーッッ」



こすってもこすっても、ただ赤くなるだけ。


私は、消えないその跡を湿布で隠した。

こすりすぎて傷になった肌に、湿布がひんやりとヒリヒリ痛い。






ガチャ‥



「ーー‥おはよう」



制服を着てダイニングへ入ると、2人は仲良く並んで座っていた。



「おはよう」



そう言いながら、スコアから一瞬たりとも目を離さず、私を見ないお父さん。



「おはよう♪今朝はオレンジジュースにする?ココアにする?」



ニコニコ可愛く笑いながら問うお母さん。



「あ‥すぐ出るからいいや」



娘が首筋に湿布を貼ってたって気付かない親。

それはどうしたの?

そう聞かれたって、答えられないくせに。ーー矛盾だよね?



「いっふぇふぃわーふ」



私は、そこに私の分として用意されていた、まだ温かいクロワッサンを口にくわえ、お昼用の巾着を持って玄関を出た。






朝の眩しい光を浴びながら、亀みたいに首筋をなるべく隠すように歩く。


ーー変な人に見えるかな‥?



でも、こけしみたいに短い髪じゃ、隠しようがないんだけどね?



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