拘束お姫様 *番外編開始
「どうして・・・・・」
部屋から出て行こうとする彼の背中に、 小さな声が届く。
「どうして、あの子なの!?」
涙を目に溜めて、 シンデレラに対する嫉妬を含んだ瞳を、王子へ向ける。
そんなアリシャスの様子を、彼はただ黙って見つめていた。
「あの子は、奴隷なのですよ!? 一番価値の低い、存在なのに! 毎日、灰で塗れた ぼろい服を着ているような 女なのに!! なのに、どうして――――!!」
「あの少女より綺麗な服を着、貴族という価値の高い存在。 だから自分が選ばれるとでも、思ったのかい?」
その頬笑みは いつも人々に見せる優しい、けれど本当はとても冷たい 作りモノの表情だった。
「――――ッ」
図星だった彼女は 返す言葉が出ない。
「地位の高い者を好む、 など 誰が言った? 僕はあなたたちみたいに、宝石ばかりで身を飾っている人は、むしろ嫌いなんだよ」
柔らかい口調のはずなのに、それはとても 鋭い口調にも聞こえた。