迷姫−戦国時代


・・・暫くすれば新しく二人の気配が近づいてきた


「硲師匠!」

狛津と里丸が庭から顔を出す




「これ、預かっていてくれ」



それは昨夜硲が狛津に渡した 文 であった。硲はそれに驚いた様子だ




「俺は、もう大丈夫だから。師匠方には・・・見守ってて欲しいんだ。


それと共にさ」


清々しい表情の狛津に硲は口元が緩み嬉しさが込み上げた



「ああ行ってこい、狛津。それと里丸をしっかり頼んだぞ」


「おう!
じゃ、行ってくるよ」


狛津はあの時と同じ笑顔で去って行き、里丸も一礼して彼に着いて行くとその光景に硲は目を細めた











二人は狛津の家に着けばまずは琵琶の基礎を見てもらっていた



「あんちゃ・・・師匠!その琵琶凄い綺麗な細工施してあるな」


琵琶・・・これはあの時燃やし無くしたと思っていた俺の相棒

否、少しだけ違う
俺の破損してある部分を俺が造った菫の琵琶で修理をし新に造り上げられた俺の・・・俺だけの琵琶


一度は諦め捨てたお前を、もう一度俺に会わせてくれた人達に感謝でいっぱいだ





だから誓うんだ



「もう捨てたりはしない、大切な宝だ」


「ん?」


狛津は誤魔化すように里丸の頭を数回撫でると琵琶を撥で鳴らす






「さあ、始めるぞ」

「うん!」





終わりなき琵琶の演奏を






今此処に出発だ
















枇杷の国編−−完−−
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