恋花~桜~
~プロローグ~桜並木の美少女
春の眩しい朝陽の中を、俺は自転車で軽快に走っていた。高校登校初日が快晴なのは気分がいい。

《何か良いことあるかもしれないな。例えば…すっごいかわいい子と知り合いになるとか》

一瞬そう思ったが、その妄想にすぐ蓋をした。自分の悪い癖だ。

《そんなかわいい子が、俺なんか好きになるわけないよな…》

男のわりにはお喋りな自分だが、なぜか女子とは上手く話せない。つい緊張してしまって、自分でもわかるほど顔が真っ赤になってしまう。だから【彼女いない歴=年齢】なのだ。頭脳・容姿・運動能力全ての面で秀でた所はない。1つだけあるとすれば背が少し高いことくらいだろう。

《これを克服しないと、高校でも彼女できないかもな…》

そう思いながら長い坂道を下り終えると、広大な田んぼが広がっていた。

《あ、あれだ!》

今日から俺はこの先に見える高校へ3年間通う。俺が進学した高校は、見事なまでに田んぼのど真ん中に建てられていた。家から大体30分程の通学路の最後は、高校の正門へと続く100m程の桜並木通りだ。

桜はまだ咲き始めだったが、俺にはとても鮮やかに見えた。

その時…

ちょうど目の前を自転車で走る髪の長い女の子がいた。肩を通りこすストレートの髪は、サラサラと風になびいていて、俺は思わず見とれてしまった。

《すごく綺麗な髪だな…どんな娘なんだろう…》

俺はちょっと自転車のスピードを上げ、その子に気付かれないように、横顔をのぞいてみた。

《えっ!?》

俺の見える視界が一変した。

それはまるで、桜の花が一気に満開になったかのようだった。


~俺の高校生活は、この瞬間から始まったんだ~





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