あたしの仮旦那は兄貴の親友
突撃☆元彼新婚宅
「ただいま」というあいつの声で
あたしはぱっと時計に目をやった

時刻は午後6時半をさしている

え? 早くない?

「果恋ちゃん?」

なかなか「おかえり」と言わないあたしに
あいつが顔を覗き込んでくる

「あ、ああ。おかえり」

「顔色が良くて良かった
今朝、遅刻したからさ
心配してたんだ
早めに仕事を切り上げて帰ってきて良かったよ」

うんうん、と頷きながらあいつがネクタイを緩める

「ちょ…予定とかなかったのか?」

ほら、元カノに誘われていたんじゃないのかよ

「予定? そんなのないよ
ただ仕事をいくつか持ち帰ってきたら
それをやらないとだけど
仕事場で果恋ちゃんの体調を気にしながらやるよりは
家のほうでやったほうがいいと思ってね」

あいつが重たそうな鞄に視線を落とす

相当な量を持ち帰っているみたいだ

「仕事じゃなくて
今夜誰かに誘われたりしてないのか?」

元カノとか…

「誰とも出かける用はないけど
どうして?」

「いや…別に
なんとなく、そう思っただけだ」

「果恋ちゃん?」

「何でもない!」

あたしはソファのクッションを
ぎゅうっと抱きしめると
ぷいっと顔をそらした
< 59 / 125 >

この作品をシェア

pagetop