パステルクレヨン




…言うつもりなんて、これっぽっちもなかった。



口に出すまで、気付かなかった。



まだ、右の耳が熱いよ。




絶対、嫌われた。


だって、まだ玉置は鳴海さんのことが好きで、あたしはそれを知ってる。



しかも、まだ鳴海さん好きならそれでいいんじゃない、とまで言っておいて。



…図々しいとか、思われたかな。



絶対、また混乱させた。




冷房のきいた部屋にいるあたしの体を、冷や汗がゆっくりと伝う。



後悔だよ。


きっと、これが『後悔』だ。



今から玉置にまた電話しようかな。



――今のはちょっと間違いで…


とか、


――気にしないで


とか。


――答えはいらないの。


とか、


――玉置も頑張りなよ。


とか。




ホラ、今ちょっと冷静になっただけで、色んな言葉が出てくるじゃない。






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