パステルクレヨン
Ⅱ
…言うつもりなんて、これっぽっちもなかった。
口に出すまで、気付かなかった。
まだ、右の耳が熱いよ。
絶対、嫌われた。
だって、まだ玉置は鳴海さんのことが好きで、あたしはそれを知ってる。
しかも、まだ鳴海さん好きならそれでいいんじゃない、とまで言っておいて。
…図々しいとか、思われたかな。
絶対、また混乱させた。
冷房のきいた部屋にいるあたしの体を、冷や汗がゆっくりと伝う。
後悔だよ。
きっと、これが『後悔』だ。
今から玉置にまた電話しようかな。
――今のはちょっと間違いで…
とか、
――気にしないで
とか。
――答えはいらないの。
とか、
――玉置も頑張りなよ。
とか。
ホラ、今ちょっと冷静になっただけで、色んな言葉が出てくるじゃない。