パステルクレヨン



あぁ、いつもの玉置だ。


電話越しに、あたしは泣きそうになるのを必死でこらえていた。



姿が見えないものを守るために姿が見えないものと戦うのは、とても辛い。



「玉置ならっ……できるよォ……」



玉置なりに、前に進もうとしてくれたことが、嬉しかった。


玉置らしさを取り戻してくれたことが、本当に嬉しかった。



あぁ、あたし、やっぱり玉置が好きだ。



高校いっぱいまでなんて、そんなのムリだ。



あたしはゆっくりと電話を切ったあと、机に向かう。



憧れだった、最初は。



勉強ができて、信頼が厚くて、何でもできるのに、優しくて、穏和で。



やっぱり、頑張ろう。



玉置、あたし待ってるだけじゃないよ。



自分でも頑張って、玉置が道を通りやすいように、崖を芝生にしておくから。



そしたらまた一緒に、横で歩いて笑おうよ。



恋人じゃなくっても、いいよ。






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