パステルクレヨン
『俺はまだあの時、鳴海を信じていなかった。…信じられていなかった』
玉置が両手をポケットの中に突っ込んで遠くを見る。
『きっとあの時ヒロコが言ってたことが嘘だったとしても、どっちにしろ俺たちは別れてた』
ああ。
こんな話してる時なのに。
不謹慎だとは思うけど、『俺たち』って言えてもらってる鳴海さんが羨ましい。
いいなぁ。
あたしは6年間、色んな玉置を見てきた。
楽しい時は一緒に笑いたい。
辛いときは分かち合って、一緒にあたしも泣きたいよ。
…なのに、あたしの想いは、報われない。
『なぁ、早瀬』
『ん?』
玉置がニッと笑う。
あ、あたしの好きな笑顔。
『俺たち、付き合っちゃう?』