胡蝶蘭
誓耶はため息をついて、椅子にもたれた。



「なんで別れたの?」



駄目元で訊いてみると、何を思ったのか、偉槻はあっさりと答えた。



「喧嘩。」


「嫌いになったの?」


「さあ。」


「向こうが振ったの?」


「いや。」


「じゃ、偉槻?」


「だろうな。」


「なんで?」


「なんでだろ。」



偉槻は水を口に運ぶ。



誓耶もつられて口を湿した。



「まだ、好き?」


「いや。
もう、会ってもなにも感じないだろうな…。」



そう言って、偉槻はなんとも言えない表情で誓耶を見た。



胸が盛大に踊る。



初めて見る、その憂えた表情。



少し、怖かった。



「なんか、ゴメン。」


「何が?」


「傷、抉ったかなって。」



偉槻は少し間を置いて、小さく吹き出した。



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