胡蝶蘭
イッケン ラクチャク
処置を終え、病室に戻るとそこはさっきと打って変わって静かになっていた。
「あいつ、傷害で逮捕だって。」
ぼそっと健が言った。
そうだな、当然だな。
しかし、健は思いもよらなかった言葉を口にした。
「それと、ストーカーと脅迫と強姦教唆の罪ものっかる。」
うん、と相槌を打とうとして、はたと気づく。
今、なんて…?
見上げると、健は怒っていた。
厳しい視線が、誓耶を射抜く。
「お前、なんでそのこと俺に言わなかったわけ?
偉槻も偉槻だ。
そんなんが原因でお前ら別れてたんだぞ、いい加減にしろこの馬鹿が。」
「誰に聞いたの。」
「店長だよ。
偉槻の野郎の態度がおかしかったから、むこうも心配してたらしくて。」
あー、店長か。
「馬鹿が、納得して話を終わらそうとしてんじゃねーよ。」
バシッと頭を殴られた。
「なぁ、いいか?
今度そんなことあったら真っ先に言え。
こんな大事になってから知らされるこっちの身にもなれよ。」
わかったか、と睨まれて、誓耶は頷いた。
というかここでわかったと言わなければどうなるんだろう。