胡蝶蘭
*
幸せだ。
思い立てばいつでも誓耶に触れられる生活。
最初はこんな日がくるなんて、予想できなかった。
「キスして…ッ。」
そんな言葉が誓耶から自然に転げ出てくるなんて。
そんなこいつに俺がもっとのめりこむだなんて。
誰が予想できただろう。
匡には絶対に誓耶に近づかないように約束させたし。
茉理子はもう塀の中だし。
慎吾には頭を下げて元通りになったし。
もう不安は解消された。
あぁ、なんて幸せなんだろう。
たとえ、一時凌ぎだとしても。
俺は今、この瞬間を愉しむ。
「誓耶。」
「何?」
誓耶は目を閉じ、俺の頭を抱く。
鎖骨を啄みながら、偉槻は言った。
「好きだ。」
「あたしも!
もう離れないでね。」
「誰が離れるかよ。」
くすりと笑い、頭を撫でてやる。
この先どうなるかはわからない。
でも今しばらく、このままそっと2人でいられることを願って。
fin.