胡蝶蘭







幸せだ。



思い立てばいつでも誓耶に触れられる生活。



最初はこんな日がくるなんて、予想できなかった。



「キスして…ッ。」



そんな言葉が誓耶から自然に転げ出てくるなんて。



そんなこいつに俺がもっとのめりこむだなんて。



誰が予想できただろう。



匡には絶対に誓耶に近づかないように約束させたし。



茉理子はもう塀の中だし。



慎吾には頭を下げて元通りになったし。



もう不安は解消された。



あぁ、なんて幸せなんだろう。



たとえ、一時凌ぎだとしても。



俺は今、この瞬間を愉しむ。



「誓耶。」


「何?」



誓耶は目を閉じ、俺の頭を抱く。



鎖骨を啄みながら、偉槻は言った。



「好きだ。」


「あたしも!
もう離れないでね。」


「誰が離れるかよ。」



くすりと笑い、頭を撫でてやる。



この先どうなるかはわからない。



でも今しばらく、このままそっと2人でいられることを願って。













fin.



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