初恋の向こう側

俺は、中森さんが帰った後も一人で暫くの間、放心状態のようになっていた。

そして、色んな考えを巡らしているうちに、頭の中でバラバラになっていたピースが土台に収まっていったんだ。

哉子さんの部屋にあった、あの青い歯ブラシは小暮さん用で。

小暮さんのパスケースに入ってたラブホの会員カードは、哉子さんと行ってたということになり。

メイド喫茶でバイトしてた哉子さんをこの店に紹介したのも……小暮さん?

それから……そうだ! 鍵だっ!

趣味の悪い柄のついたあれは、哉子さんの部屋の合い鍵だったわけだ。しかもペアの……。


昼は、清楚でピュアな哉子さん。

夜のあの姿は、小暮さんに仕込まれたものなのか?

油ギッシュで、不潔極まりない小暮さん。

荒れまくった唇でキスをして、毛むくじゃらの手で哉子さんに触れて。


そして ──

……マジかよ?


俺は、あのベッドでしちゃったんだ。
小暮さんの愛人と……。


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