初恋の向こう側

立ち去ろうとする俺等の背中を、成沢の低い声が呼び止めた。


「おい、お前もうちの学校の一年だよな?」


俺に向かって言ってるんだと気付いて振り向くと、ヘラヘラと笑いながら奴が言った。


「その口の悪い女とは、もうヤッたのか?」


その顔が、あの時ヒロを侮辱したオークの顔に重なって見えた。

それから成沢は、今度はヒロに向かって言ったんだ。


「“好きなヤツがいる”って言ってたのって、もしかしてコイツのこと? 
ふ~ん、こういうのが好きなわけ?

だったらお前もさ、こいつの前だったら恥ずかしげもなく股開いて、さっき啖呵切ったぐらいのでっかい声出すんだろ?」


さっきより下品に更に卑しい笑い声。それに同調するゼブラ女のバカ顔。

馬鹿馬鹿しいとは思っても我慢できなかった。

あの時は、ヒーローになれなかった俺だけど……。

今度こそ ──


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