初恋の向こう側

「えーっ! 携帯忘れたの? それってかなり不便だね」

「そうねぇ」


テーブルの上に投げ出した腕に頭を預け、半ばふてくされながら、そのまま二人の会話を訊いていた。


「それで茉紘ちゃんはもう発ったの?」

「えっと……確か五時過ぎの便って言ってたかな」

「いいなぁ~。カナダだったよね? 羨ましすぎるぅー」

「でも別に遊びに行くわけじゃないんだから」

「ねぇ お母さん! あたしも高校生になったら行かせて?」

「だから留学っていうのは遊びに行くわけじゃないって言ってるでしょ?
それに、うちにそんな余裕ありません!」

「ケチーッ!」


………。

” カナダ ” に ” 留学 ” って一体何の話だよ?


「ちょっと待ったっ!!」


急に声を張り上げたら母さんと真央が同時に振り向いた。


「留学って……誰がだよ?」


恐る恐る尋ねる。
すると、またも同時に答えた二人。


「茉紘ちゃんに決まってるでしょ」

「お兄ちゃん、まさか聞いてないの?」

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