初恋の向こう側
ひと夏の終わり



ブラインドから漏れる光が、朝の訪れを告げていた。


隣で寝息を立てている哉子さんは、下半身だけ下着を着けた格好でうつ伏せになっている。

薄っぺらな上半身と、肉付きの悪い少年のような尻。

それを眺めたところで何も感じない。微塵の色気も僅かな高鳴りも、可笑しなくらいに。

昨夜はあれほど掻き立てられた俺の欲望は、もう今は目の前の彼女に何も欲していないらしい。

足元に丸まっているケットを引っぱり、その体に掛けた。

ベッドから這い出て、デニムに足を通しTシャツを被る。

ポケットに入れっぱなしだった携帯を出して見るが、電池切れしていた。

でも、もう始発も動きだしている頃だろう。


キッチンには、並んでカップの中に収まっている揃いの歯ブラシ。

その横をスルーして玄関を出た。

ドアに鍵をかけ、ピンク地に水色の水玉のついたカギを郵便受けに投げ込んだ。


< 93 / 380 >

この作品をシェア

pagetop