妖恋華
開けた視界に飛び込んだのは、夕日の中、少しだけ視線をこちらに向ける藍色の髪を持つ青年とこちらを心配そうに伺う輝く金髪の少年
「なんで…」
二人は学校のはず――
乙姫の疑問など二人には容易に読み取れたようで
「お前の気が乱れた…お前に何かあれば、華紅夜様が―――」
「心配で急いで帰って来たんだよ?こんなとこに来てダメでしょ」
青の言葉を遮るように虎太郎が身を乗り出して子供に言い聞かすように乙姫を叱る
「ご、ごめんなさい……」
呆気に取られてそのまま謝罪の言葉が出る
それに、虎太郎は“いいこだね”と乙姫の頭を撫でる
「って、それどころじゃなくて変な妖怪みたいなもの…が………」
気づくと先程まで、自分を襲おうとしていた妖怪は居なくなっていた
「…気づくのが遅いだろ」
呆れたような視線を青に送られ、言葉を詰まらせる
確かに気づくのは遅かったかもしれない――――それにしても
「あの妖怪は?」
「青ちゃんがやってくれたよ」
「それって、どういう意――――」
「ほら、立って」
乙姫の質問を掻き消すように、虎太郎は笑顔で声を被せる
その明らかにおかしい態度に戸惑いつつも虎太郎に手を引いてもらい、何とか立ち上がる
「あっ、あなたも………」
思い出したように後ろに振り返るが――そこにあの少女は居なかった