妖恋華


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目立たないようにこっそりと教室に入るが、それが要らぬ配慮だと理解する。

本鈴には間に合ったものの、まだ放課の名残があるのか教室内は騒がしく、乙姫の存在に目をやる者は少なかった

何気なく青を目で探してみると、虎太郎の言った通りそこにいた。安堵の息を漏らす

「んもぉ!乙姫ちゃんたら何処に行ってたのー!?」

元気な少女の声。
驚いてその方向に目をやると眉を吊り上げ口を尖らせた凜がいた

「ご、ごめん…。青を探してて……」

「龍牙くん?そういえば…彼も二限目には居なかったわね」

「そうなの?」

虎太郎曰く、真面目なはずの彼がサボり…

やはり心配だ。
しかし話せるような雰囲気ではない……明らかに。


“うぅ”と唸りながら席に着く

「ほんと好きねぇ〜」

ニヤニヤ。
凜が乙姫を見ながら楽しそうに言う。その表情はやはり楽しそうである

「もう!だからそういうのじゃないからね!」

「はいはい」

楽しげにしつつ適当に返す凜を乙姫は“むー”とした表情で見つめる




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