四十六億年の記憶
一日目


 「その存在が何であろうと、望んでもいないというのに生を受け、名前と役割を与えられて燃え尽きるように生きていく。と、最近思うようになったのだが君はどう思う?」


 テーブルを挟んで私の向こう側に座る彼女に問いかける。
彼女は死んだような黒い目をほんの僅かに細めて、
「わたしに聞かれてもわからないね。というかその質問は、二十にも満たないガキにするものではないと思うけど」


 そのとおりだ。私は知ったかぶりの答えなど期待していない。
やはり彼女はよくわかっている。
意図せず笑みがこぼれ、それを見た彼女が怪訝な顔をする。


 「何を笑っているんだあなたは。今の会話の何処に笑う要素があった?」
全く手を加えていない黒髪をがしがしと掻いて呆れたように、未だ笑みの止まない私の顔を見る。


 「いいだろう?私の求めていた答えをそっくりそのまま君が返したのだ。嬉しくもなるさ」


 そう。彼女は本当に期待通りに私の望む答えを返す。
期待以上の逸材だ。
彼女に出会えたことを幸運だと言わず何と言う?










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