かけがえのないキミへ


俺は梨花を起こさないように、静かにベッドから下りた。
そして床に散らかっている自分の衣服を拾い上げる。


下着を履いて、制服を着る。
梨花の部屋にある白いレトロの冷蔵庫から、勝手に水を取り出して、水分を補給する。


綾音に『泊まる』って言ってないな…

俺はソファーに転がる携帯を見つめながらこんなことを思っていた。



『綾音も泊まってるだろ…』


綾音だって竜也と寄り添って寝てるんだろうな。

こんなことを思っていた俺は、あとで後悔をするんだ。
いつだってそう。
綾音は人一倍優しくて、人一倍人を愛している。

俺は馬鹿だから、そんなこと気が付かなかったんだ─…



『あれ?もう朝?』


するとベッドで寝ていた梨花がゆっくりと体を起こして、乱れた髪の毛を手で直していた。


『学校の時間までまだ余裕あるし、俺帰るわ』


俺はカバンを持って、梨花のいるベッドに近づいた。



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