かけがえのないキミへ


『ん?なにそれ?』


両手が塞がっているので、俺は顎で綾音の持っていた袋を示した。


綾音はその袋を俺の目の前で広げ、中身を見せてくる。
中身は、色とりどりの、丸いもの。


『アイス?』


こう聞くと綾音はこくんと頷いた。
綾音が買ってきたものは、アイスだった。
そして携帯を取り出して言葉を付け足す。



《暑いから、食べたくなったの。怜、アイス好き?》


『すげぇ好き!ありがとな!』


《溶けちゃうから、早く中に入ろ?》


綾音はマンションの入り口を指して、中に入って行った。
そのあとをついていく俺。

今の俺は、梨花の愛犬のショコラのように、尻尾を振って喜んでいただろう。

だけど俺は見落としていた。


俺たちの光景を、隠れてこっそり見ていた人のことを─…


嫉妬が、人をおかしくする。
嫉妬のかたまりが、
今にでも俺を襲おうとしていた─…



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