かけがえのないキミへ


夫が全て悪いのではない。
幸せを保てなかった私も悪いのだ。

ごめんね…綾音。



夫は綾音を見下ろして、舌打ちをした。


『いつまでこんなもの持ってるんだ?』


こう言って、綾音が持っていたクマの人形を奪った。
綾音は背伸びをして、人形を取り返そうとする。

『お父さん!やめて!返して!それ綾音の!!』


綾音の可愛らしさ声を聞いていた私は、切なくなって、声が詰まってしまう。
体を丸めて、私は夫を睨んでいた。


すると夫は、人形を庭に向けて投げた。


『いらねぇだろ、こんな人形』


クマの人形は、ぐったりとして、地面に倒れた。綾音はそんな光景が信じられなかったのか、涙を流して夫を叩いている。小さな拳で。


『なにするの…お父さん…!!綾音の…綾音のクマさんだよ!!』


ピンク色の頬に流れる涙が、更に私の胸を苦しくさせるの。



< 288 / 370 >

この作品をシェア

pagetop