かけがえのないキミへ


俺はなにをしてあげられる?
これを聞いた俺は、綾音になにを言ってあげられる?


『怜君は綾音の全てを愛せると思う?』


タバコをふかして、母親は俺を見た。
俺は目を合わせることが出来ず、お茶の入ったグラスを見つめた。
すっかり氷は溶け、お茶の色が薄くなっている。


『…あの、なんで綾音は生まれてこなければ良かったって言ったのかな…なんでお母さんを恨むの?』


『綾音は私が綾音を産んだことに恨んでいるのよ』



『で…でも…』


綾音は、本当に恨んでいるのだろうか?
俺も父親が大嫌いだ、恨んでいる。
だけど俺は生まれてこなければ良かった、なんて思ったことないよ。


綾音はなにを隠しているの?



『一度ね?いつだったかしら、高校に入学した少し後に、綾音が私に笑ってくれたの。なにかあったの?って聞いたら、綾音ね?頬を真っ赤に染めて照れ笑いしたの』



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