ラスト・ラン 〜僕らの光〜


「ゴーーーーール!!」


気がついた時には電信柱の横で、前田と一緒に寝転がっていた。

どっちが先にゴールしたのだろう。

がむしゃらに走っていたからその瞬間を見逃してしまった。

多分、ほぼ互角だったように思う。

でも斗真は誰が先にゴールしたかなんてどうでもよかった。

忘れていたあの感覚。

それが走った後の充実感を呼び覚ました。


「たまには誰かと一緒に走るのも悪くないだろ」


橙色に染まった雲がゆるやかに流れていく。

久しぶりに味わった感情に斗真の鼓動は熱くなった。


「走るってこんなに気持ちいいもんなんだな」


そう呟くと、前田は嬉しそうに目を輝かせながらいった。


「陸上部、入るか?」


斗真ははっ、と現実に帰る。

そうだった。

前田の本来の目的は自分を陸上部に入れることで、危うく勧誘に引っかかってしまうところだった。


「それとこれとは別だから」


とたんに冷たくあしらう斗真に、前田はがっくりと肩を落とす。

そんな彼を尻目に、斗真は続けた。


「でも、一応考えとく」


その後の前田の喜び様は誰もが想像できるだろう。

前田はまるで子どものようにはしゃぎ回っていた。

まだ正式に陸上部に入ると決まったわけではないのに、大げさに喜ぶ彼の様子に呆れながらも、斗真はまんざらでもなかった。
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