放課後。
 今日はタクと会う約束はしていないけど、タクの学校の校門にいた。
 なんか、無性に会いたくなって。
 恋してると、そんなもんでしょ。
「タク、部活まだ終わってないのかな~?」
部活帰りの生徒が、私の横を通り過ぎて行く。
 不審がったり、興味だったりと、いろいろな目にさらされる私の身にもなれっつーの!
 一人で怒っていると、校舎からタクが出てくるのが見えた。
 さっきまでの怒りはどこへ?
 私の胸は喜びで満たされた。足が勝手に、タクの元へ向かおうとしていた。
 しかし、一気に気持ちがおさまる。とても、ショックだった。
 タクに、女の子が話しかけていた。私と全然違うタイプのクラスの人気者のような、綺麗な女の子。
 そして、私にいつも見せる眩しいぐらいの笑顔。私が大好きな笑顔。
 足下から、何かが崩れていく錯覚。一人、取り残されたような錯覚。
 あの笑顔、他の子にもするんだ。私だけの笑顔じゃない。
 ワタシハ、トクベツジャナイノ?
「ユイ!?なんで?」
驚いたような顔で、私のほうへ走ってくるタク。
 ヤバイ!こんな考えでタクに会えないよ。
「なんだ?彼女?」
「あはは。まぁ、そんなとこ」
クラスメートとのタクの会話が、頭の中に響くが、風のようにただ通りすぎていくだけ。
「ほれ、行くぞ」
私の手を引いて強引に校門から離す、タクの体温はいつもと変わらなかった。
 まるで、私だけがおかしいと言っているよう。
 学校からしばらく離れても、私の機嫌が直る気配がない。
 こんなのは、変だってわかってる。タクが、あの女の子に、他のどんな女の子にだって、笑いかける事は悪い事じゃないって言うこともわかってる。私だって、タクじゃない男の子に笑いかける。
 でも、なんかモヤモヤする。
 どうして?誰か、教えてよ。

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