エピローグ
 薄紅色をした花びらが、今年も寂れた駅を舞っていた。
 ベンチに座って、カメラを覗き込んでいる。
 今年も一人で、一日中。日が昇る前から、日が落ちたあとまで、ずっと。
 この桜の花びらが、どこの木の花びらか私は知らない。
 きっと、この木を見つけることは、夢から覚めることと同じなんだと思うから。
 この桜を見ると、時折彼の顔がちらつき、昔の思い出が蘇ったりする。
 でもそれは、もう思い出。思い出なの。
 正直言うとね、私の心はまだタクを想っているのだと思う。
 諦めの悪い、バカな女でしょ?
 でも、本気で人を好きになるって、こういう事でしょ?
 彼が今の私の一番。ただそれだけ。
 いつになれば彼のとの恋にピリオドを打てるかなんて、私にはわからない。
 でも、これだけは言える。
 彼との思い出は、なにものにも返られない、しあわせな宝物。
「ありがとう」
携帯に映っている幸せそうな四人のプリクラと、おそろいのキーホルダーは、いつまでも輝いていた。
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