いつか、桜の下で…




ぽんっ


不意に肩が叩かれる。後ろを振り向いて、そこにいたのは、



利人君だった。




「どした?」



にこにこ笑う利人君の顔は、なんだかすっきりしていた。


きっと、利人君の中にいた藤堂君も、自分のいるべき場所に戻っていったからだ。



「ううん。何でもないよ」



私がそう言うと、利人君はにこりと笑い直す。どこか、意地悪そうな顔で。



「?!」


私の体は、利人君の両腕でしっかり抱き留められた。

何が起こっているのか、頭で理解する前に顔は赤くなっている。


そして、理解するよりも早くに利人君は、私から手を離す。


新しいスキンシップなのかな…?


状況が理解出来ないまま、私は利人君を見ていた。



すると、利人君は私の耳元に顔を近づけて、


「虐めだから、そんな困った顔すんなって」



小さな声で囁いた。

「……ーっ!」


利人君の顔が離れた途端、私は、囁かれた耳を両手で押さえた。…そうでもしないと、何だか恥ずかしくて。

だって、利人君は余裕な表情で私を見ていたから。


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