いつか、桜の下で…




「あー…喉いてぇ」



カラオケ店から出ると真っ先に利人君は、そう言う。



「飴、いる?」



私は、部屋に置いてあった飴を利人君に渡し、

利人君は、「ありがとっ」と凄く嬉しそうに飴を口の中に入れる。



「陽菜。私、もう帰るねっ」



携帯を閉じる久美。



「わかった。また明日ね!」



久美に軽く手を振り、私も帰ろうと思った時。



「送る」



かなり疲れた顔をしている三浦君がそう言った。



「今日はいいよ。三浦君、疲れたでしょ?」




「あー、じゃあ。俺が送ろっか?」



利人君は、飴を口の中で転がしながら、そう答える。



「いや。いい。俺が送るから」



怒っているのか三浦君は、私の手を強く引っ張っていく。




「み、三浦君っ?」



びっくりしすぎて、私は利人君に「バイバイ」とすら言えなかった。



最近の三浦君は、ホントにどうしたんだろう?







私達の姿が遠ざかっていくまで、利人君は、ただ、苦笑をして、私達を見ていた。






< 68 / 162 >

この作品をシェア

pagetop