キミが刀を紅くした

沖田の憂鬱


 大物取りがしたいと言う。だがそれより仲間が守りたいと言う。でも俺にはそんな力はない。土方さんくらいにならないと何も守れないし、大物にも逃げられる。

 あの人はすごい人だ。

 仲間を守り、成果を上げ、加えて新撰組と紅椿の後始末をしてしまうのだから。意図も簡単に。



「総司、首尾はどうだ」


「もう検挙しましたよ。合わせて四十六人、全員一応生きて頓所に送らせました。それより、今頃ご登場た遅いじゃないですか」


「お前も知ってるだろ。昨晩に大和屋が木瀬粂助の一群を叩いたんだ。その後始末をしてたんだよ」



 あぁご苦労なこって。何たって土方さんはこんなに働けるのだろう。俺なんて人を斬るしか能がないのに、今回は人さえ斬れない。

 不貞浪士の大量検挙、新撰組のお手柄。なんて号外か明日の瓦版には載るかも知れない。ある屋敷に四十六人もの浪士が集まって倒幕の相談をしていたのだから驚きである。それを見つけた観察も大したものだとは思うけれど。

 久し振りの大人数だからドンパチ出来ると期待したのにとんだ大外れ。俺は刀すら抜いていない。全部一番隊の隊士がやっちまったもんだから隊長の立場がねえ。なのに称されるのは隊士ではなく隊長の俺。世の中はどうかしてる。



「そういや、大和屋の旦那は粂助さんに喧嘩売って――どうなったんです。そもそも何で喧嘩に?」



 土方さんはため息をついた。当然勝負は大和屋の旦那に傾いたに決まっている。幾ら粂助さんが任侠の出だと言っても旦那の強さは半端ない。負けるはずがない。

 俺が頭の中でそんな思案をしていると、土方さんが語り出した。



「結果は大和屋の勝ちだ。勝ち負けで言う様な勝負でもねぇがな」


「ただの喧嘩じゃねぇ、と?」


「大和屋は賭博場ででかく負けたらしい。何がどうなったかは詳しく聞かなかったが、とにかく賭けられてたのは瀬川だったんだ」


「人を賭けに出すた、御法度だ」


「そうかい。だが人身売買とは訳が違うんで追求は出来ねぇ。何せ全員同意の賭けだったらしい」


「村崎の兄さんも?」


「あぁ」

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