涙の雨

俯きながら横目で望月を見ると

俺から顔をそらし、違う場所を見ながら新しい煙草を吸っていた



―絶対怒ってるよ、アレは



望月の機嫌が悪い時


それは煙草を次から次へ吸う時だ


前に保健室で犯された時も


望月のデスクの上には、吸い殻が山のように積まれた事があった




俺はずっと話せなくて

暫く黙り込んでると、望月が重い口を開いた



「それとも俺に対するあてつけ?」

「―え?」




顔を上げて望月を見ても

まだ俺に顔をそらしたままだ




「好きでも無いのに付き合ってるなんて…、今の中学生ってスゴいんだね」


笑いながら話す望月




その言葉に

俺は背筋が凍る思いをした




「何言ってるんですか、俺はそんな気持ちで…」

「―だって博文の事は好きじゃないんだろ?肯定も否定も、しなかったじゃないか」


声の口調が荒っぽく聞こえてくる



その態度に不安を感じた俺は
望月の腕に掴み、こっちを向いて下さいと言った



望月は無言のまま俺を見つめると



一瞬、優しく笑ってくれて



機嫌が治ったんだと勘違いした俺は

一気に不安が飛んでいった
< 151 / 195 >

この作品をシェア

pagetop