涙の雨

「遼太が今思ってる事、言ってやろうか?」


山田が俺の顔を覗き込みながら言った



「―先輩って最低!こんな人ともう付き合いたくない!もう別れますからっ!って感じだろ?」


ニヤリと笑いながら話す山田

俺は驚愕しながら見つめるだけだ


「…遼太が思ってるほど、俺はいい人間じゃねぇ。お前みたいなヤツには…尚輝が一番合ってる」



そう言うと突然立ち上がり
ベンチに座る俺を見下ろした




「先輩、俺は何も…」

「遼太の考えてる事は何でもわかる。俺にはお前の心が見えんだよ」




俺は何も言えず

山田を見上げる事しか出来なかった




「俺は大丈夫だよ、振られたぐらいで死にやぁしねぇさ!」


ハハハと笑って、俺の頭を力強くなでる



その優しさに自分の胸が苦しくなった



ワザとそうやって平気なフリをして


俺に気遣ってくれてるんだ




「まぁ俺が強引に誘ったみたいなもんだし。無理に…付きあわせて悪かったな」

「そんな…」


俺が辛い顔で見ると山田は笑っていた


「尚輝とうまくやれよ?相談はいつでも乗ってやるから。じゃあ…俺は行くぜ」




そう言い残し

山田は俺の元から去って行った
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