涙の雨
「まだ時間が残ってるから、食事でもしていこうか」


タクシーで東京駅に向かった俺達は

駅ナカを二人で歩いていた



平日なのに、たくさんの人がいて

ほとんどがサラリーマンとかOLばかり



中には恋人同士や家族連れもいた

「遼太は何か食べたいものある?」



望月が俺に聞くと

俺は何でもいいですよと答えた



「ねぇ…尚輝さん」

「ん?」





「手、繋いでもいいですか?」





最後だから


もう会えないから、望月と少しでも繋がっていたい




昔は同性で手を繋ぐなんて
絶対に無理だと感じていたのに




あの時はそんな気持ちなんて
全く持っていなかった




逆に、もっと早くから繋いでいればよかったなって


後悔をするほどだった




俺の言葉を聞いて

望月は優しく笑ってくれる




そして

俺の手をギュッと握ってくれた




―あったかいな


尚輝さんの手




この温もりを感じられるのも、残り数時間だけど



今日は絶対に泣かないと

前から心に決めていた



笑って…





笑ってお別れしよう
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