涙の雨

空に月と星が浮かぶ頃


望月の車は俺の自宅付近で止まっていた



「今日はありがとうございました。とても楽しかったです!」


俺は運転席に座る望月に

満面の笑みを浮かべて言った



「尚輝さんのペンギン好きにはびっくりしましたけど」

ちょっと意地悪っぽく言うと

大人をからかうんじゃないと
怒られた気がしたが、俺はにやけたままその場を流した



「遼太。はい、これ」




その時、望月は後ろの座席に置いたあの紙袋を取り

俺に手渡した


「?」

不思議な顔で望月を見つめると
中身を見てごらんと笑って俺に言った



「遼太にプレゼント。少し…子供過ぎたかな?」



ZOOとプリントされた紙袋の中に手を伸ばし、中身を取り出すと



ちょこんと座った、可愛らしいパンダのぬいぐるみが入っていた



「上野といったら、パンダだからね。今日も一緒に見ただろ?」


ジャイアントパンダのブースはかなり混雑していたが

笹をむしゃむしゃと食べる姿を
この目でしっかりと見る事が出来た




「ありがとうございます、尚輝さん!俺…嬉しいです」
< 54 / 195 >

この作品をシェア

pagetop