Sin(私と彼の罪)
ピピピピピピ。
無機質な音が鳴り響く。
モゴモゴとした口で「あ、俺だ」とゼンは言った。
ビールをごくりと飲んで、彼は電話に出た。
「ハイ」
その様子をまじまじと観察する私。
それに気付いて嫌そうに目を細める。
「ああ、ハイ。大丈夫です。終わりました」
電話の内容的に、仕事の話だろうか。
興味が無くなった私は自分の料理に目を移した。
「はあ?」
突然、言葉づかいが崩れるゼン。
なんだ、と思って彼をもう一度見ると、その顔は不機嫌そのもの。
一気に興味を引き戻した私は、口にものを入れながらさりげなく耳をそばだてた。
「あー…、ハイ。ハイ、分かりました」
何かを諦めたように、ゼンは適当に応対する。
その合間に相手のくぐもった声が、かろうじて聞こえた。
言っている内容自体はわからなかったけど、その声色は明らかに女のものだった。
誰だろう。
仕事先の人かな。
勝手にそう決め付けて、料理を箸で弄ぶ。
なんだ、コレ。
なんで、私こんなにヤな気持ちなんだろう。
答えにたどり着きたくなくて、無理やり口に料理を押し込む。
私はただ、噛むということに集中した。
「わり、ちょっと出るわ」
「え?」
突然言われたことに追い付けなくて戸惑う。
ゼンはすでに食べ掛けの料理になど目もくれずに身支度をしていた。
「なんで?」
「仕事」
簡潔にそう言うと、ジャケットを羽織ってスタスタと玄関に向かう。
「ちょ、待って」
私は自分も立ち上がってそれを制する。
「あ?なに」
「な、なにって…」
「メシ、悪いな。ごめん、急ぎなんだ」
パタンと閉じられたドアをみて、私は愕然とした。