Sin(私と彼の罪)
「本当にね~彼女ってのはいいよね」
「はあ…」
隣でにやにやする三十路間近の男のノロケ話を、半ば呆れながら聞く。
かなりどうでもいいので、適当に相槌をうつ。
「家に帰ると人がいるっていう喜びとか~」
「はあ…」
「可愛い彼女の笑顔とか~」
「はあ…」
「もうね、ちょー幸せ」
「よかったですね」
周りを見ると、哀れみの目が私にチラチラと向けられているのがわかった。
くそ。
私、生け贄かよ。
カナミを初め、他の店員を脳内で数発殴る。
それでも店長の話は止まらない。
「シノはさーあの男前とどうなったの?」
やけに店長は私とゼンのことを気にする。
前に「嫁にやる気分だ」とか言ってたけど、多分、だからだと思う。
「なんもないですよ」
「そっか。なんか残念だな…シノちゃん…セックスレス?」
憐れむような目で見られて本気で殺したくなる。
「は?なんでです?」
「最近、お肌のチョーシ悪くありまセン?」
にやりと笑って、頬をツンとされた。
もちろん私はイラっとする。
「俺なんかはここ一週間、毎日のよーに…っておっと。この先はちんちくりんには早えーな」
「ハイハイ、そーですか」
もうこれ以上聞いてらんない。
ここまで耐えた自分を称えながら、店長に背を向けてサッと歩きだす。
後ろで店長の声がしたが、無視した。