Sin(私と彼の罪)
ガーッ
いらっしゃいませ~
自動ドアが開くと、問答無用に外の冷気が私まで届く。
声は歓迎モードだが、顔は引きつってサイアク。
ここ何年かで馴れた独特の香りを吸ってため息をつく。
「おい、シノ!」
「なんでしょうか」
店の置くからガタイのいい男が歩いてきた。
このレンタルショップの店長だ。
今年、三十路だけどどうも若い。
「お前だけ来月のシフトだしてねーぞ。まあ最近休んでたからな」
そう言われてぎくりとした。
「あっ!すいません!すぐ出します」
やばい、と顔にでていたのか店長は馬鹿にしたように笑った。
「明日までな。なんなら週3なんて言わないで、もっと日数増やしていいんだからな」
「え、週3?」
「ああ。お前、毎月そうだろ?こっちは万年人員不足なのに」
「嘘だ!私、もっと入ってるはずですってば」
店長ってば、つまらない冗談を言う。
私は軽く笑い飛ばす。
「はあ?お前、なに言ってんだよ。週3で契約したの忘れたのかよ」
「…あ、そうでしたっけ」
嘘。
本当なの?
記憶を引っ張りだそうとするが、上手くいかない。
自然と顔が強張る。
「シノちゃん遂にアルツハイマーかな?」
店長はニタニタと嫌な笑みを浮かべて私を見下した。
ムカついたのでそれを睨み付ける。
「…違います。バイト、週6にします」
「まじで!?助かるよ~!他のバイトはやめたんか?」
「ええ、まあ」
「そっか、じゃあよろしくな!」
週3?
他の、バイト?
週3のレンタルショップの安月給なんかで生活できないことくらいすぐにわかる。
だからって私、他のバイトなんてしてない。
最高でも、家賃と光熱費くらいしか払えない。
貯金だってたかが知れてる。
私、今までどうやって生活してたんだ。
でもたぶん、短期のバイトとかしてたんだろうな。
じゃなくちゃ今まで生きてこれない。
…とにかく、今日から節約かな。