月の恋人









――…ゆら、ゆら。


涼の背中に揺られながら、二人で帰路についた。






「ちょっ……お前、メシ食ってんのかよ!」


あたしを背負った瞬間、涼が声を上げた。




「…食べてるもん…」


…………嘘。

ここのところ
食欲なんか、ほとんど無かった。






「……ったく………」



涼の吐いたため息が
すぐ近くで感じられる。



「病み上がりなんだから、ちゃんと食えよ…」




“病み上がり”かぁ。

……病気だった訳じゃないんだけどな…




「……あたし、病気じゃ…ないもん……」


なんか…言い訳みたい。



「んな事分かってるよ。あの晩、お前運んだの、俺なんだから。」



「……運んだ…って…」
「……あ……」





そういえば。


あの日…
お風呂出てすぐ倒れたから……






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