月の恋人






唇を重ねた瞬間、
涼の目に表情が戻ったのを見た。


決して、良い色ではなかったけれど。



怒りとも、哀しみとも
その、どちらとも言えない

複雑な、色を帯びて―…





「……イイ加減、“弟”も、うんざり」



「………どういう…意味?」




――… 頭がぐるぐる回る。



熱のせいじゃなくて。





回転の悪い歯車を必死で働かせて

現実のピースを拾い集めなければ。



目前に広がる難局に

どう、対処すればいいのか

考えなければ……。







あたしの悪あがきを嘲笑うように


涼は
あたしを強く抱きしめて

とびきりの、爆弾を落としていった。







「…… 陽菜が、好きだ 。」










< 226 / 451 >

この作品をシェア

pagetop