月の恋人






その子の名前そのものの


陽だまりのような温もりが


唯一の、安らぎだった。










――――…








「1番」「トップ」「No.1」


これが、うちの――桜木悟を家長とする桜木家の、家訓である。


「2番であることに何の意味もない」

それが、親父の口癖だ。



うちは、本家ではない。
親父が次男だからだ。


本家は長男である信司(シンジ)おじさん
…つまり、陽菜ちゃんのお父さんが会社と共に継いでいる。



次男だからだろうか。


親父は、昔から
「2番であること」を異常に嫌い
「何でも1番」と俺に繰り返した。









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