手と涙 〜婚約者はピアノ講師〜
浩平は慌てた様子で
柚香に駆け寄って来た。
「姿が見えないから
気分でも悪いのかと・・・。
・・・って、え?!
瀧口?!」
しかし柚香の足元に蹲(うずくま)る
男の姿を認めると
驚いた声を上げて屈みこんだ。
「浩にぃ・・・知り合い?」
柚香は内心しまった!
と思いながら恐る恐る声をかける。
「え?あぁ・・・うん。
大学時代の友達。
同じサークルだったんだ。
ほら、瀧口、どうした?
立てるか?」
浩平は瀧口という名らしい
その男を抱き起こしながら
そう答えてくれた。