pupil
でいるよ。」
「そうなんです。今度知り合いのお寺に彼女を連れて行こうと思っています。ありがとうございます。」
私には判断能力があった。
私が彼女を救ってあげようとさえ思っていた。
でも、私も狂ってしまった。
自分では気付かなかった。
私も彼の周りの女性の1人だったのである。
入れ物は雨に濡れた藁のように弱々しくなってしまい、私の魂は剥き出しになった。

精神科に入院していた時、綾戸くんはお見舞いに来てくれた。
5時間も居てくれた。
どこか自分のせいだと思っていたのだろうか。

「瞳さん大丈夫?」

聞いた途端、彼の大きな黒目は灰色になった。

「瞳は死んでるんですよ。」

そのときの彼の横顔を私は忘れられない。
怖かった。
ただ怖かった。
なんで死んだのかどうやって死んだのかなんて聞けなかった。

「今、彼女のことをテーマにした作品を造りに、宮崎に帰って撮影したりしてるんです。」

「きっと、綺麗な映画だろうね。彼女、喜ぶでしょう。」

綾戸くんの腰にはヘンプのキーチェーンが揺れていた。
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