あやめ
それにしても、この学校には気が強くて口の悪い女子が多過ぎる。
ぶつかった相手の顔を覗き見ると、
「…あ!」
先日の、あの傷だらけの女、“ヤマザキ”だ。
「あ?なんだよ」
彼女は僕の顔を覚えていないのか、相変わらず睨みをきかせてくる。
以前に血がにじんでいた口元には、絆創膏が貼られていた。
「たーくーみー!!どこだー!生きてるかー!?急げー」
どこからかクラスメイトの声が聞こえてきて、僕は慌てて手を上げて応えて見せた。
「ここ、ここ!今行く!」
僕は彼女を気にしながらも、そのどさくさにまぎれて逃げるように立ち去った。
後ろで舌打ちが聞こえたような気がするけれど、気のせいだということにしておこう。