あやめ

悲しい瞳



“あやめ”と初めて会ったあの場所に、僕は度々やってくる。


大きな声では言えないが、ここで授業をサボったりすることもある。


空に向かって大きく手を広げた木の下で、緑の葉のすきまから青空や太陽の陽射しを見るのが好きだった。


ある日の昼休み、僕はまどろみの中にいた。


しかし、その幸せな時間は、あの日のように突如として奪われた。


ザザッと音がしたと思うと、


「ちょっと隠れさせて!」


あやめが現れて、茂みに身を隠した。


案の定、数人の女子に追われていた。


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